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神戸地方裁判所 昭和44年(わ)751号 決定 1970年2月25日

少年 Z・K(昭二八・一〇・一八生)

主文

本件を神戸家庭裁判所尼崎支部に移送する。

理由

被告人に対する本件公訴事実の要旨は「被告人は第一、昭和四四年九月一四日午後零時頃尼崎市○○○×丁目○○番○号○○○公園内の道路において自動二輪車を運転しその練習をしていたが、当時同公園には家族連れの人出が多く、かつ、運転技術も未熟であつたのであるから、かかる場合、自動二輪車等を運転する者としては常に進路前方・左右に対して注意を払い、緊急の場合には直ちに停止できる程度に、徐行をなし、もつて、事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、他に気をとられ前方に対する注視を欠きかつ時速約三〇キロメートルで運転した重大な過失により、○田○(当六歳)が道路に出て被告人の進路上に居るのを発見したときには、その間隔はすでに約五メートルに迫つており、ろうばいの余り、何ら避譲措置をとらないまま、同人にその背後から被告人の車両を衝突させてはねとばしたうえこれを轢き、よつて、同人に頭部外傷などの傷害を与え、その結果同人をして右事故の直後死亡するに致らしめた、第二、同日同所において公安委員会の運転免許を受けないで前記自動二輪車を運転したものである。」というのであつて、右事実は当公判廷で取調べた各証拠によつてこれを認めることができ、被告人の右第一の所為は刑法二一一条後段に第二の所為は道路交通法一一八条一項一号六四条に各該当する。

そこで、被告人に対し、刑事処分が相当であるか保護処分が相当であるかについて検討するに、本件は、市民の憩の場であるべき公園内で、しかも無免許でかつ、被告人の一方的過失によつて起きた死亡事故であり、この犯行の態様、結果の重大性を考えると刑事処分あながち過酷なものともいえないが、被告人は犯行当時は一五歳で、現在においても一六歳であつて思慮分別が十分でなく、その人格形成上未熟な時期であること、昭和四四年三月中学校を卒業し現在職業訓練所に入所しているが、学業の面ではそれ程成績の良い方ではなかつたが怠学もなく過去現在共に真面目な日常生活を送つており、非行歴は勿論、問題視しなければならないような行状もなく、その性格面においても特別問題になるような点が見当らないこと、被告人に対しては此の際、本件犯行についての自省を強くうながし、ひいては人命の尊さ、社会規範に対する認識を深めさせ、更には人間性を涵養する必要がある(本件犯行についても金銭的解決が済めば自己の責任が果されたと考えるような物の考え方極めて危険であり、被告人においてそのようにだけ考えていると云う訳ではないが、適切な指導がなされていないためもあつてかそのような傾向がうかがえる)こと、その他被告人の家庭環境など事実調べの結果を総合すると、被告人に対し刑を科するのは適当でなく、保護処分に付するのがむしろ少年法の目的にそうものと認められるので、少年法五五条を適用し本件を神戸家庭裁判所尼崎支部に移送することとする。

よつて、主文のとおり決定する。

(裁判官 岸本昌巳)

参考 受移送家裁決定(神戸家裁尼崎支部 昭四五(少)五四二号 昭四六・四・六決定)

主文

少年を神戸保護観察所の保護観察に付する。

理由

非行事実

昭和四五年七月二八日付当庁家庭裁判所調査官田中曠子作成の少年調査票に記載(無免許運転による重過失致死一回)のとおりである。

適条

刑法二一一条後段。道路交通法六四条、一一八条一項一号。

処遇意見

少年は、本件非行について試験観察に付され、調査官の指導を受けたところ、少年の社会性の発達が後れている点はいくぶん治療できたようであるが、少年についてはこの点も併せて長期にわたつて指導する必要性が明らかになつたので、今後保護観察による長期にわたる指導をするため在宅補導を行なうこととした。添付の本件調査記録参照。(少年法二四条一項一号、少年審判規則三七条一項。)(裁判官 市原忠厚)

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